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福岡地方裁判所飯塚支部 昭和33年(わ)354号 判決 1959年2月17日

被告人 林昭夫

主文

被告人を懲役弐年に処する。

未決勾留日数中五拾日を右本刑に算入する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は人夫をしている者であるが、昭和三十三年五月三十一日午後四時三十分頃、福岡県田川市東区松原、池の畔において、友人である大野哲夫と釣りをしていた際、折柄同所に通りかかつたA(昭和二十九年八月二日生)を認めるや、遽かに劣情を催し、同女が十三才未満であることを知りながら強姦しようと決意し、同女に対しキャンデーを買つてやる旨申向けて同所より約四十米離れた墓地につれ込み、同時刻頃右Aをその場に押倒した上、強姦しようとしたが、同女が泣出したので、人に発見されることを恐れてその目的を遂げなかつたものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

(被告人等の主張に対する判断)

(一)  被告人は本件犯行を遂行するに至らなかつたのはAが泣出したので可哀想に思い、姦淫するのを思止まつたためである旨主張するところ、仮りに右主張が中止未遂の主張であるとしても前記判示事実中に記載した如く、犯行途中においてAが泣出したこと、犯行場所から約四十米離れたところで大野哲夫が釣りをしていたこと(被告人もそれを知つている)が認められるのみならず、被告人の検察官に対する供述調書などにより、被告人に同種犯行の前歴があることなどを併せ考えると、被告人が本件犯行を遂行するに至らなかつたのは、Aが泣出したので、大野哲夫等に発見されることを恐れたためであると認められ、被告人の司法警察員並びに検察官に対する各供述調書によると、被告人もこれに添う供述をしているので被告人の右主張はこれを採用しない。

(二)  弁護人は本件犯罪は被害者が三才の幼女であることから不能犯である旨主張するが、前掲の証拠によると、犯行当時被告人は十九才であるのに対し、被害者であるAは三才の幼女であることが認められるところ、医師高橋一心作成の鑑定書によると三才の幼女といえども、成年男子が性交することが可能であることが認められるので弁護人の右主張はこれを採用しない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 桜木繁次 川淵幸雄 岡崎永年)

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